いちばん酷い状態だった空き家の話

私が空き家を管理するようになってまる11年、今年で12年目に入りました。
いろいろな状態の空き家を管理してきました。
そのなかでいちばん酷い状況だった空き家の話です。
幸い、倒壊しそうな空き家は扱ったことがないので、その一歩手前の状態だった物件です。

空き家管理のご依頼

今から約10年ほど前。管理のご依頼いただいたのは、空き家の所有者からではなく、所有者の法定後見人である弁護士からのご依頼でした。ホームページを見た弁護士事務所の方からお問い合わせがあったのです。
当時は、兵庫県で空き家管理について検索すると、ヒットする空き家管理業者は私をはじめ、2、3ある程度でした。対象となる空き家に最も近い管理業者が私のところだったようです。

空き家に初めて入った時の状況

その空き家は、私が管理を依頼された時点で、人が住まなくなって30年以上経過していました。
不動産登記情報を見ると、昭和50年代に建てられていることがわかりました。
弁護士からの依頼を受け、鍵を預り、現地を見に行きました。

一見して全く管理されてこなかったことがわかる状態でした。完全に放置空き家です。
放置空き家の状況をまとめると以下のとおりです。

  • 郵便受けがチラシ類でいっぱい
  • 庭の植栽が伸びて道路に越境している
  • 庭に竹林ができていた
  • 雑草が繁茂し背丈ほどに
  • 庇の軒天が剥がれるように垂れ下がっていた
  • 1階の床板が腐ってほとんど無くなっていた
  • 30年前の家財道具がそのままの状態
  • 雨戸が釘で打ち付けられていて開かない
  • 建物外観はそれほど酷く見えず、すぐに崩壊するようなことはない

伸び放題の植栽

現地を見に行ったところ、まず目に入ったのは伸び放題の植栽です。
その中でも、2種類の植栽によって荒れていました。

一つは、カイヅカイブキという木です。
昭和50年代頃の家の庭には、目隠しの効果も期待してか、カイヅカイブキを植えているのをよく見ます。この放置空き家もまた、そのカイヅカイブキが敷地の外周に沿って植えられていました。
おそらく今まで剪定されてこなかったのでしょう。カイヅカイブキの高さは家の2階より上、10mちかくになっていました。そして、その枝葉は、塀の上を超えて道路上にかかり、道路や側溝には落葉が積もっていました。

塀を超えて道路に越境する 貝塚伊吹と竹

もう一つは、竹です。
この放置空き家の庭のうち、建物に近い位置に竹が植えられていたのようなのですが、繁殖したのか、庭の三分の一くらいが竹林になっていました。竹の怖いところは、横へ横へと根を伸ばし、繁殖していくことです。

庭に繁殖する竹

最初に手を付けたこと

私が真っ先にやったことは、ご近所への挨拶でした。
これほど荒れた状態で放置してきた空き家です。ご近所の人には大きなストレスとなったことでしょう。
お叱りをうけることを覚悟して、ご近所の皆さんに粗品を持って挨拶に行きました。
待っていたのは意外にも、苦情ではなく、歓迎でした。
お隣の方からは、30年以上にわたる空き家に関する苦労話を聞かせていただきました。

空き家管理では、ご近所に挨拶することが欠かせません。何かあったら苦情でよいので知らせてください、そうお願いすることが大事です。
ご近所の皆さんも、苦情を言う相手とその連絡先がわかっていると安心できます。

植栽の剪定

次にやったことは植栽の剪定です。
カイヅカイブキは思いきり短く剪定しました。
竹はすべて伐採し、土を掘って根っこまで除去しました。さらに竹の生えていた一帯に除草剤を散布しました。竹は広く根をはります。根っこを除去しても、除草剤を散布しても、すべてを除去するのは困難です。対策として、伐採後、しばらく様子を見て、まだ竹が生えてくるようであれば再度除草剤を散布することにしました。
大きなカイヅカイブキが何本もあったこと、竹の除去に手間をかけたこと、などが影響して、剪定費用はかなりの出費となりました。

庭の植栽は、まめに手入れをしなければなりません。空き家であっても同様です。少なくとも年に1回以上は剪定をする必要があります。10年も剪定しなければ、カイヅカイブキでなくても2階くらいの高さになる木はたくさんあります。お隣の敷地に越境し、枝葉や落ち葉で迷惑をかけることになります。

家を長期間放置しない

空き家を売りたい、人に貸したい、そう思ったとき、ここに挙げた放置空き家のように長期間放置していたら難しくなります。

貸すには家の大修繕が必要です。長期間放置し、家の痛みが激しくなれば、家賃で修繕費を回収するのにかなりの時間が必要となってしまいます。
回収期間が長ければ長いほど、家に別の老朽箇所が出てしまい、次々と修繕費用を支出し続けることになります。
人に貸す以上は収益性が大事。そのような状態では出費ばかりで儲けはありません。

売る場合、買いたいと言う人が荒れ果てた空き家を見て、買う気になるでしょうか?
植栽伸び放題、壊れかけの状態では悪い印象しかありません。中古住宅としても、古家付き土地としても同じです。
家を解体して新たに家を建てる人であっても、伸びきった植栽、荒れ果てた庭と壊れた家を見て、更地にするための費用が高くなると思い、買うことをためらいます。
売るためには、植栽はすべて伐採し、土を掘って根も除去、建物や門扉もすべて解体撤去までして、更地として売り出すしかありません。
結局、売るにしても、貸すにしても先行して大きな出費が必要です。

空き家を放置する期間が長ければ長いほど、売るにも、貸すにも、ハードルが高くなり、空き家問題を解消することが困難になります。
空き家対策の考え方はとても単純明快。使わないものは不要品です。いつまでも放置して、対応を遅らせてはだめです。できるだけ早く売却することが最善策です。