今現在、空き家になっている住宅の多くは、住宅が不足していた時代の建物です。
質よりも量が優先されていたため、質、性能、立地等、様々な問題を抱えていることが多いと言えます。
古い住宅にありがちな問題点
- 敷地面積、延床面積が狭い
- 一居室の面積が狭い
- 構造上、耐震性能が低い
- 階段が急勾配になっている
- 勾配のある土地に建ち、高い擁壁の上にある
- 公共の交通機関を利用するのに不便
空き家になっている古い住宅と、今の住宅とは性能に大きな差があります。例えば、建築基準法が改正された昭和56年以前に建てられた住宅の耐震性能を挙げることができます。
また、デザインにも特徴は少なく、古い住宅に住みたいと思わせる要素は少ないのです。
海外の古い住宅のような、古くても味のある住宅は日本には極端に不足しています。
当然、ただ古いだけの住宅では、賃料を安く設定できなければ賃貸物件としてのニーズも無いと言えます。
また、古い住宅は安全性にも多くの問題を抱えています。
特に階段の安全性には大きな問題があります。
通常、階段の幅、蹴上げ(けあげ)、踏面(ふみづら)のサイズについては、建築基準法施行令第23条による規制があるため、それを遵守して作られています。
一般的な住宅であれば、蹴上げは23センチ以下、踏面は15センチ以上に定められています。
蹴上げとは、階段の一段一段の高さ、踏面とは足を置く踏板部分の幅です。(下図参照)
蹴上げは低め、踏面は広めの方が上り下りしやすいのですが、それも限度があります。ちょうどよいバランスが大事です。
今の家は、建築基準法施行令第23条で定める数値よりも、余裕をもった設計になっています。
足を置く部分が狭く、一段が高いと上り下りがしにくく、踏み外して階段から落ちてしまう危険性が高くなります。
しかし、法令を遵守して作られていたとしても、蹴上げ23センチ、踏面15センチの階段はとても上り下りしにくいと感じます。
この法令が定められた頃と現在では、日本人の平均的な足のサイズが異なり、足のサイズが大きくなっていることも考慮しなければなりません。
もはや規定ぎりぎりのサイズでは、快適に生活できるとは言えません。
実際、最近の住宅では、蹴上げが21センチ、踏面が20センチ程度になっていることが多く、快適に階段を上り下りできるようになっています。
また、昭和の古い住宅の階段と現在の住宅の階段との差はサイズだけではありません。
古い住宅では直階段が多く、階段を踏み外したら下まで落ちてしまいます。
一方、現在の住宅では廻り階段になっていること多く、下まで落ちるまでに止まります。
その差は住宅の敷地面積、建築面積、間取りによる差ではありますが、今では狭小住宅の設計に多くの工夫が見られ、単純に直階段を用いるということは少なくなっています。
空き家を活用しようという国の動きは評価できることですが、現実的には質の悪い住宅の延命を図るよりは、質が高く、設計上の工夫により快適に住むことができる住宅へ生まれ変わらせる方が良い場合もあります。
住宅の質を正確に評価することで、空き家を活用するべきか、除却するべきかを判定する、その基準を明確に作ることも今後は必要になるでしょう。
公認不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士
不動産投資、住宅購入のアドバイザーとして、個別相談、セミナーなどのサービスを提供している。2008年から空き家・留守宅管理のサイト「留守宅どっとネット」を運営。自ら空き家管理を実践する空き家管理人。
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