空家におけるプロパンガスの対処法

空き家のガスは止める

地方都市では、プロパンガス(LPG)の使用が一般的です。
プロパンガス(LPG)の地域では、長期間、空き家になっているのに、ガスボンベが残されたままの物件もあります。
使用する予定がないのであれば、ガスの使用停止手続きを行い、ガスボンベを引き上げてもらいましょう。

空家において最も心配な事は、火災です。
誰も住んでいないので火災に気付くのが遅くなり、近隣に延焼してしまうかもしれません。
空家においては、火災の原因になりそうなものは徹底的に排除しなければなりません。

ガス会社に連絡する

プロパンガスのガスボンベを撤去してもらうには、ガスボンベやガスメーターに記載されているガス会社(プロパンガスを供給する会社)に連絡して撤去を依頼します。
今後、使用予定が全く無い場合、解体を予定している場合には、ガスメーターも一緒に撤去してもらうとよいでしょう。ただし、ガスメーターはガス会社の所有物なので、扱いには注意が必要です。勝手に撤去せず、必ずガス会社に依頼して、ガスメーターを撤去、回収してもらう必要があります。

ガス会社との関係に注意

プロパンガスの場合、ガス配管等ガス設備の工事費をガス会社が負担していることがあります。ガス工事代を負担するかわりに、プロパンガスの供給契約を得ようというものです。一定期間、ガス設備はガス会社の所有ということになります。
ガス会社がガス設備を所有することで、建物の使用者がガス会社を変更することができないようにして、競争を排除しています。
プロパンガスを利用している賃貸住宅などではよくあることです。
私は、個人の住宅ではこのようなケースはないと思っていました。賃貸住宅と個人の住宅では、ガスの使用量が大きく異なり、ガス会社にメリットがあまりないからです。
しかし、私が管理する空き家で該当する物件があり、個人の住宅でもこのようなケースがあることを知りました。

ガス会社による競合排除の事例

私が管理している空き家の事例をお話しします。
昭和50年代の建売分譲住宅であり、分譲主である不動産会社のグループ企業がプロパンガスを供給していました。
10年近く空き家になっているにもかかわらず、ガスボンベが設置されていたので、ガス会社に撤去してもらうことにしました。
この物件は解体を前提にしているのでガスメーターの撤去も依頼したのですが、これは認めてもらえず、ガスボンベのみの撤去となりました。
ガスメーターもガスボンベも撤去した場合、プロパンガスを供給していたガス会社がどこなのかわからなくなるからだそうです。
ガス会社としては、この家はうちの会社がプロパンガスを供給しているのだと認識してもらうために、ガスメーターだけでも残したいようでした。

この空き家の周辺は、都市ガスの供給エリアです。
周辺の新しい家は都市ガスを使用しているのですが、この空き家はプロパンガスを使用していました。
次に建て替える際には、都市ガスを選択することになりそうです。
しかし、それをさせないための仕掛けがありました。

この空き家は、私道によって接道要件を満たしており、その私道の所有者は分譲主である不動産会社のままになっていました。
普通は、その私道に接する住宅を所有する人たちの共有か、私道を細かく分筆して各所有者が自宅前部分の筆を所有する形にします。分譲時の不動産会社が所有したままにするのは異例なことです。

これでは、都市ガスを引くための工事ができません。私道を所有する不動産会社の許可がなければ、私道を掘削してガス管を通すことができないからです。
許可をお願いしても、グループ企業に不利益になるので許可してくれません。
都市ガスという最大の競争相手を排除するようにしていたわけです。

ガス会社に確認したところ、ガス設備の工事代等をガス会社が負担しており、プロパンガスの供給契約により、20年間はガス会社を変更できない契約になっていました。
これについては、20年はとっくに過ぎているので、ガス会社は変更できそうです。
将来、この空き家を使用することがあった場合、複数のプロパンガス会社に料金で競合させることができます。

プロパンガスの使用料金は、ガス会社によって異なり、一律ではありません。
競争が排除され、他のガス会社を選択できない場合、基本的にはガス会社の言い値になります。
ガス代の負担が重くなりそうなので避けたいところです。

ガス会社との契約を確認する

ガス会社がガス設備を所有しているかどうかは、プロパンガスの供給に関する契約書でわかります。
契約書内には、ペナルティが定めれていることが一般的です。プロパンガスを供給する他のガス会社や、都市ガスに切り替えようとすると、ガス会社が工事費を負担したガス設備を買い取らなければならないというものです。
契約内容にもよりますが、20年程度の期間を設けて、長期間、ガス会社を変更できないようにしています。
その間のガス使用料金でガス設備の代金等を回収する計算です。ガス会社としては、当初の負担を回収するまでは契約を切られては困るので、この条項は必ず入れてあるはずです。

ガス会社との初期の契約書は、しっかりと確認し、必ず保管しておきましょう。
売却する際にも、この契約内容は次の所有者に引き継がれることになります。
先に挙げた私が管理している空き家の事例では、プロパンガスの供給契約書はありませんでした。
今の所有者が中古で購入した際に引き継がれていなかったからです。
ガス会社を変えたいと申し出ても、何も知らない人であれば、当初の契約で変えられないと言われて引き下がってしまうかもしれません。
プロパンガスの供給契約書はとても重要な書類なので、内容を確認し、把握したうえで大切に保管しておかなければなりません。

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