放置空き家・空き地の雑草、ご近所はどこに苦情を言えばいいのか?

空き家、空地の雑草問題 被害者は近隣住民

管理が不十分な空き家、空地は、近隣住民に悪影響を与えます。空き家、空地の管理不全において、一番の被害者は近隣住民、ご近所さんです。空き家、空地の所有者が加害者、近隣住民、特にお隣さんが被害者という関係です。
近隣住民は、どうすれば空き家、空地の被害から解放されるのでしょうか?
誰に苦情を言えばよいのでしょうか?

結論を申し上げますと、管理が不十分な空き家、空地の問題は、近隣住民だけで解決することは難しく、役所などの協力が必要です。以下に、苦情を言っていく先、協力を要請する先についてまとめてみました。

所有者本人もしくは管理者に苦情を言う

苦情を言うべきは、所有者もしくは管理者です。所有者、管理者に連絡を取り、雑草を刈るなど、適正な管理を行うように苦情を言うことが大事です。何も言わなければ放置されたままです。勇気が必要ですが、口うるさく苦情を言うくらいでないと、空き家、空地の所有者が対応してくれることはありません。

所有者の連絡先を知らない場合等

所有者とその連絡先を知っていても、所有者が亡くなり、相続が発生した場合、相続人の連絡先がわからないことが多々あります。遠方に住む子供が相続した場合、子供たちとは付き合いが無く、連絡先がわからなくなるのです。相続登記がされていなければ、誰が相続したのかさえわかりません。
この場合、まずはご近所に連絡先を知っている人がいないか聞いてみるとよいでしょう。ご近所に交流のある人が一人くらいはいるものです。
私が管理をしている空き家では、空き家の近所に、所有者の方と付き合いが続いている方がいることが多いです。空き家の状態について問題が有れば、近所の方から所有者に連絡があり、私が対応をしています。

空き家の場合

空き家の場合、お隣さんやお向かいさんが連絡先を知っていることがあります。
所有者が挨拶していることがありますし、空き家になることを不安に思っているお隣さん、お向かいさんの方から連絡先を聞き出していることもあります。
実際、私が管理をしていた空き家のうち、何件かはご近所の方と連絡をとっておられました。

もし、あなたの家のお隣、又はお向かいが長期間空き家になっていて、空き家所有者の連絡先を知らないのであれば、空き家所有者の連絡先を手に入れるべきです。
空き家の所有者又は管理者らしき人が出入りしていたら、積極的に声をかけて連絡先を聞き出しましょう。
空き家の所有者に連絡をすべき日が必ず来ます。
空き家に何か問題があれば、お隣さんやお向かいさんが真っ先に被害にあいます。何かあった時、すぐに対応するように所有者に連絡しなければなりません。

空地の場合

空地の雑草問題は空き家よりも深刻です。所有者が長期にわたり放置することが多いですし、人に貸すことも、管理人を置くことも少ないからです。
空き家よりも雑草が生える面積が広くなり、お隣さんにはかなりのストレスになります。
空地の場合には、所有者に苦情を言いたくても、ご近所が所有者の連絡先を知っていることは少ないでしょう。

空き家の場合には、以前、そこに所有者が住んでいたときに交流があり、情報を得ていますが、長年放置されている空地は、所有者とご近所に付き合いはありません。
不動産登記簿で、所有者の氏名と住所を知ることができますが、相続後、相続登記をしていなければ、誰が相続したのかわからなくなり、所有者不明土地となります。
所有者不明土地になるとお手上げです。ご近所の方が、長年放置された空地の所有者と連絡を取るのは困難です。残される方法は役所への相談だけです。

近年、日本の土地を購入する外国人が増えています。将来、外国人所有で管理不全となる土地面積が急増すると考えられます。外国人、外国法人が所有者となると、固定資産税の未納、自治会費、町内会費の未納、管理不全等の問題が起きた際、連絡を取ることが困難です。外国人所有の土地も、今後、大きな問題となるはずです。
ただし、今のところ、外国人が所有している場合でも、固定資産税等の徴収のため、地方公共団体は所有者の連絡先を把握できているようです。私の管理している空き家に、中国在住の中国籍の方が所有している空き家があるのですが、固定資産税を滞納すると地方公共団体から督促の連絡があるとおっしゃていました。

地方公共団体に相談する

所有者と連絡を取る手段がない若しくは、所有者が不明である場合、又は苦情を言っても対応してもらえない場合には、地方公共団体の担当窓口に相談し、協力を要請するしかありません。地方公共団体は、土地建物に固定資産税を課税しているため、常に所有者を把握するように努めています。地方公共団体が近隣住民に個人情報である連絡先を教えることはできませんので、地方公共団体の担当者から連絡してもらいます。
担当窓口は、地方公共団体によって部署名などが異なります。住民課など住民からの相談を受け付ける窓口がある地方公共団体もあれば、空家対策課など空家専門の窓口で近隣住民からの相談を受け付けている地方公共団体もあります。指定都市では窓口が区役所か、市役所本庁かわかりにくいこともあります。いきなり窓口に行くのではなく、事前に電話で担当窓口を確認し、相談しておく方がよいです。

空家相談窓口

空家法施行により、地方公共団体は積極的に空き家対策、空き家問題の解消に努めなくてはならなくなりました。地方公共団体の多くは空家相談窓口を設けています。
近隣の空き家についての相談を、空家相談窓口に言えばよいのかというと、必ずしもそうではありません。空家相談窓口の主な目的は、空き家所有者の相談に応じて、活用を促し、空き家を減らすことだからです。空き家に関する近隣住民からの苦情は、別の窓口で受け付ける地方公共団体が多いようです。
例をあげると、空き家対策に積極的な京都市では、近所の空き家で困っている場合の相談窓口は各区役所、空き家の所有者がその活用方法等を相談する場合には都市計画局住宅室住宅政策課空き家相談窓口、と明確に分かれています。
空地の問題については、空き家と同じ窓口で対応する地方公共団体もあると思いますが、どこで対応するのか不明確な地方公共団体もいまだにあると思います。
不幸にも、あなたの住む地方公共団体において、空き家、空地の雑草についての苦情をどこの部署で対応するのか不明確な場合、どこが窓口になるのか互いに押し付け合い、各窓口をたらい回しにされるかもしれません。(空家法施行前はどこの地方公共団体もそんな状態でした)こういう場合、粘り強く対応をお願いし、担当部署を確認し、担当者を決めてもらいます。担当者を決めていただけたら、以後はその担当者と話を進めていきます。役所の対応の遅さに腹が立つこともありますが、決して「税金払っているだろう!」なんて暴言を吐かないように。冷静に、対応をお願いするという姿勢でのぞみましょう。地方公共団体は、ご近所の空き家、空地問題を解決するために一番頼りになる存在です。何せ、課税のために所有者の連絡先を知っているのですから。

地方公共団体の協力を得る

地方公共団体に対応をお願いしても、地方公共団体ができることは限られています。電話番号がわかるのなら電話、電話番号がわからない場合には郵送にてご近所が迷惑しているので対応してほしいと伝える程度です。空き家、空地の所有者に対し、対応を強制することはできません。過剰な期待は禁物です。
植栽が道路まで出ていて危険、家屋が倒壊する恐れがあるなど、特にひどい状態であれば、「特定空家等」に認定して、助言、勧告を行いますが、空家の庭の雑草がひどい、という程度では「特定空家等」の認定は難しいでしょう。担当者から所有者への働きかけを、何回も行ってもらい、説得していただく必要があります。実際に行動するのは担当者です。担当者との関係を良好に保ち、粘り強く交渉してもらうしかありません。
以前、ある地方公共団体の空き家を担当する部署に行った際、担当者が空き家の所有者と電話で話しているのを聞いたことがあります。何回もあきらめず電話をしていたのか、電話先の所有者とかなり人間関係ができており、その道のプロだなと感心しました。その地方公共団体は、空き家問題の取り組み、その結果において、全国でも評価されている地方公共団体です。空き家、空地の問題解消は、地方公共団体の取り組みしだいではないかと思います。

地方公共団体の協力で問題を解消した事例

私が管理している空き家のなかには、近隣住民が、地方公共団体に協力を依頼して空き家の問題を解消した例があります。
その空き家は、所有者が遠方に住んでおり、10年以上放置されていました。植栽が2階の高さまで伸び、枝葉は道路に越境し、雑草もかなり繁茂していました。
空き家のお向かいさんが、ご近所を代表して地方公共団体と交渉したのです。地方公共団体に何度も電話をかけて、所有者に連絡をしてもらいました。地方公共団体の担当者は、空き家の所有者に対し、適正な管理を促し、対応策として管理を業者に委託することを提案しました。その結果、空き家の所有者から私に管理の依頼があったのです。
私は、空き家の管理を受託したのち、さっそく、お向かいさん、お隣さんに粗品を持って挨拶に行き、私の連絡先をお伝えしました。そして、問題となっていた植栽はすべて伐採しました。以後、雑草が繁茂しないように除草作業を欠かさず行っており、ご近所の苦情は無くなりました。

町内会・自治会に協力を要請する

放置された空き家、空地によって困っていることを、町内会・自治会の議題にあげ、協力を要請することも有効な方法です。地方公共団体の中には、放置空き家があれば、担当部署に報告してもらうように町内会・自治会に依頼しているところがあり、スムーズに対応してもらえることがあるからです。
地域の問題は、町内会・自治会を通して地方公共団体へ吸い上げられています。町内会・自治会の役員の方々は、地方公共団体に要望を伝え、対処してもらうように働きかけてくれます。
町内会・自治会は何をしているのかわからない、だから町内会費・自治会費は払わない、そういうことを言う住民もいますが、それは大きな間違いです。
空き家の問題はお隣さんやお向かいさんだけの問題ではありません。その地域全体の問題です。空き家の多い地域では移ってくる人が減り、地域全体の不動産価格が下落します。地域住民の資産を守るために、町内会・自治会を中心に、地域住民が一丸となって、空き家を減らす努力を続けていかなくてはなりません。

まとめ

空き家に関する苦情は、空き家の所有者に直接言うべきではありますが、苦情を言うのは勇気が必要です。また、苦情を言ってもなかなか対応してもらえないことが多いと言えます。
地方公共団体に相談し、協力を要請することが現実的な対応策だと思います。
空き家の問題は、地域全体の問題です。自分たちだけの問題とせず、できるだけ多くの協力者を得ることが早期解決につながります。

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    • 匿名希望の町内会長

    初めまして、匿名希望の町内会長です。といっても三月いっぱいで任期が終わります。あと一週間というときに、空き家のお隣さんが相談にみえました。
    市役所に相談しているけれど、連絡がまだないそうで、私にできることがあるのかと調べていましたら、この記事を見つけ、拝見しました。
    記事を読ませて頂き、市役所からの返事待ちが今のところの対処法かなと思いました。役所から持ち主に連絡がいってますが、お隣さんにはまだ、なしのつぶてだそうです。木がうっそうとしているので、蚊もすごいと言っていました。お隣さんが、たまたま持ち主が家に入ろうとした時にでくわして、木が入り込んできて大変だということを伝えたそうで、「ああ、切ってください」と言われたそうです。市役所の人は、他人が木を切れないのだというそうですが、町内会で切ったりしたらいけないのでしょうか。

    • コメント、拝見いたしました。市役所の方がおっしゃるとおりです。たとえ越境していても他人が所有する木の枝を切ることはできず、木の所有者に切らせなければなりません。(民法第233条)
      しかし、これでは所有者不明だったとき対応できません。そこで民法第233条は改正されることになりました。
      木の所有者に枝を切るように言っても切ってもらえなかった場合、所有者がわからない場合、急迫の事情がある場合については枝を切ってもよいことになります。
      改正民法の施行時期は令和5年4月1日です。
      隣地の所有者に切るように言っても切ってくれないようであれば越境してくる枝は切ってもよいのですが、切ってよいのは土地所有者です。
      町内会が切るとしたら、切る作業を土地所有者から依頼されたかたちでなければならないと思います。
      法改正の詳細についてはまだ詳しく確認できていないので、近いうちに詳細を調べて記事をあげる予定です。

      木の枝を切ることはたいへんな作業です。切った枝葉を処分する手間もいります。木の所有者にちゃんと責任をとらせることが理想です。本人に苦情を言い続け、市役所には引き続き連絡などの対応をお願いするしかないかとは思います。
      管理できない人は不動産を所有する資格はありません。早く売却してもらいたいものですね。

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