空き家を売却する際の不動産業者への仲介手数料

空き家を売却する際の経費を事前に把握する

空き家の維持管理にはコストがかかり、所有者の生活の負担になります。私は、空き家の管理を請け負う際に、使用しないのであれば、空き家を早期に売却することを勧めています。理由は単純で、古くなればなるほど、修繕費用が高くつき、ランニングコストが増えますし、空き家の資産価値は落ちていくばかりです。売れるなら早く売る方がよいです。(実際にはなかなか売れません)しかしながら、所有者の方はいろいろな不安をお持ちです。

「売るために何から手を付ければいいの?」
「誰に売却を頼めばいいの?」
「売るためにお金はいくら必要なの?」

次から次に不安や疑問が浮かぶはずです。不動産を売却した経験がある人はそう多くはありませんから当然です。
空き家を売却できる可能性があるとしたら、まずは必要となるお金がいくらになるのか、事前に必要経費を把握しておかなければなりません。
空き家売却の際に必要な経費のなかでも、確実に必要になり、大きな割合を占めるものが、不動産業者に支払う仲介手数料です。空き家を売却する際、通常は不動産業者に仲介を依頼することになります。不動産業者には、売却の際に仲介手数料という報酬を支払わなければなりません。不動産業者の報酬体系について知り、空き家を売却した金額により、仲介手数料がいくらになるのか、その計算方法を知っておきましょう。

不動産業者に支払う仲介手数料の制限

不動産業者の報酬(仲介手数料)については、宅地建物取引業法等による制限があります。報酬は成功報酬であり、報酬額の上限が決まっています。
成功報酬なので、売買が成立しないと、不動産業者は報酬を受け取ることができません。不動産業者が、どんなに一生懸命に時間を費やして売却活動を行っても、売買が成約しなければ報酬を受け取れません。また、成約しても受け取れる報酬額の上限が定めれています。報酬額の上限を超えて受取ることは法律違反になってしまいます。

不動産業者に支払う仲介手数料の計算方法

不動産業者の報酬の額は、宅地建物取引業法第46条に定めがあり、国土交通大臣の告示で定めた報酬額を超えて受け取ることができないとされています。国土交通大臣の告示に定める報酬額は下表のとおりです。取引額に対して、200万円以下、200万円超400万円以下、400万円超の三段階に分けて報酬額を計算します。

不動産業者が課税業者の場合
200万円以下の金額 100分の5.5
200万円を超え400万円以下の金額 100分の4.4
400万円を超える金額 100分の3.3

仲介手数料の計算例

空き家の売買金額が3000万円であった場合、仲介手数料の計算は以下のとおりとなります。

仲介手数料の計算例(空き家の売却額3000万円、仲介した不動産業者が課税業者の場合)
計算 仲介手数料(税込)
200万円以下の金額 200万円×5.5%=110,000円 110,000円
200万円を超え400万円以下の金額 200万円×4.4%=88,000円 88,000円
400万円を超える金額 2600万円×3.3%=858,000円 858,000円
報酬額合計 1,056,000円

上記のように、仲介手数料を計算する際には、三段階に分けて仲介手数料を計算し、合計した金額が仲介手数料となります。しかし、これだと計算がめんどうです。そこで一般的には下記の仲介手数料の速算式を使います。

【仲介手数料の速算式】
仲介手数料=売買価格×3.3%+66,000円
ただし、速算式で計算できるのは、売買価格が400万円以上の場合のみです。

上記の例を速算式で計算したら以下のとおりになります。
3,000万円×3.3%+66,000円=1,056,000円

空き家ならではの問題点

あなたが所有する空き家を売却する場合、空き家の近くにある不動産業者等に売却を依頼することになるでしょう。しかし、不動産業者の反応は素っ気ないものかもしれません。不動産業者のなかには、あなたの空き家の売却を積極的に受けない不動産業者もいることでしょう。
その理由は、あなたの空き家がなかなか売れず、手間のわりに仲介手数料が少ないからです。
はっきり申し上げると、空き家の多くは簡単には売れません。中には売れる見込みが全くない空き家もあります。
もちろん、大都市圏の良い立地にある空き家であれば売ることは難しくはないのですが、空き家の多くは、地方の人口が急速に減少している地域、もしくは大都市圏から遠いかつてのニュータウンにあります。住宅需要の少ない地域であり、売ろうにも売れないことが多いのです。
売るためには必然的に価格を下げるしかありません。それだけに不動産業者としてはあまり魅力的な仕事ではないのです。

400万円以下の売買の特例

不動産業者の報酬に関する規程が改訂され、400万円以下の低廉な空家等の売買においては、通常の報酬に加え、空き家の現地調査等に要する費用に相当する額を報酬に加算してもよいことになりました。ただし、報酬に調査費等に相当する額を加えて受け取ることができるのは、空き家の売主からの報酬に限られます。
さらに報酬の額は18万円の1.1倍に相当する金額を超えて受取ることはできません。

【400万円以下の低廉な空家等の売買の特例 条件】
①売買金額が400万円以下の低廉な空家等の売買
②正規の報酬に加算できるのは現地調査等に要する費用に相当する額
③報酬が18万円の1.1倍を超えないこと
④売主からの報酬に限定

空き家の売買では、売買価格が低いことが多く、仲介手数料はその分安くなってしまいます。安い仲介手数料では、経費倒れになることがあり、不動産業者が売買価格の低い空き家の売却を受けたがらない傾向にあります。報酬に調査費を上乗せして受け取れるようにはなりましたが、収益性、業務効率を考慮すると、依然として、低廉な空き家の売買は、不動産業者にとってはあまりやりたい仕事ではないのかもしれません。

宅地建物取引業法 第四十六条
(報酬)
第四十六条  宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2  宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
3  国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
4  宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

国土交通省告示
「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
(昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)
最終改正 令和元年八月三十日 国土交通省告示第百七十二号

第一 定義
この告示において、「消費税等相当額」とは消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第二条第一項第九号に規定する課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する金額をいう。

第二 売買又は交換の媒介に関する報酬の額
宅地建物取引業者(課税事業者(消費税法第五条第一項の規定により消費税を納める義務がある事業者をいい、同法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)である場合に限る。第三から第五まで、第七、第八及び第九①において同じ。)が宅地又は建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。)は、依頼者の一方につき、それぞれ、当該売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は当該交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。

二百万円以下の金額 百分の五・五
二百万円を超え四百万円以下の金額 百分の四・四
四百万円を超える金額 百分の三・三

第三 売買又は交換の代理に関する報酬の額
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換の代理に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第二の計算方法によ り算出した金額の二倍以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を 受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第二の計算方法に より算出した金額の二倍を超えてはならない。

第四 貸借の媒介に関する報酬の額
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の一・一倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の〇・五五倍に相当する金額以内とする。

第五 貸借の代理に関する報酬の額
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の代理に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、当該宅地又は建物の借賃の一月分の一・一倍に相当する金額以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該貸借の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が借賃の一月分の一・一倍に相当する金額を超えてはならない。

第六権利金の授受がある場合の特例
宅地又は建物(居住の用に供する建物を除く。)の賃貸借で権利金(権利金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、権利設定の対価として支払われる金銭であつて返還されないものをいう。)の授受があるものの代理又は媒介に関して依頼者から受ける報酬の額(当該代理又は媒介に係る消費税等相当額を含む。)については、第四又は第五の規定にかかわらず、当該権利金の額(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとする。)を売買に係る代金の額とみなして、第二又は第三の規定によることができる。

第七 空家等の売買又は交換の媒介における特例
低廉な空家等(売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)が四百万円以下の金額の宅地又は建物をいう。以下「空家等」という。)の売買又は交換の媒介であって、通常の売買又は交換の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものについては、宅地建物取引業者が空家等の売買又は交換の媒介に関して依頼者(空家等の売主又は交換を行う者である依頼者に限る。)から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第二の規定にかかわらず、第二の計算方法により算出した金額と当該現地調査等に要する費用に相当する額を合計した金額以内とする。この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は十八万円の一・一倍に相当する金額を超えてはならない。

第八 空家等の売買又は交換の代理における特例
空家等の売買又は交換の代理であって、通常の売買又は交換の代理と比較して現地調査等の費用を要するものについては、宅地建物取引業者が空家等の売買又は交換の代理に関して依頼者(空家等の売主又は交換を行う者である依頼者に限る。)から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第三の規定にかかわらず、第二の計算方法により算出した金額と第七の規定により算出した金額を合計した金額以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第二の計算方法により算出した金額と第七の規定により算出した金額を合計した金額を超えてはならない。

第九 第二から第八までの規定によらない報酬の受領の禁止
①宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第二から第八までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によつて行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。
②消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務を免除される宅地建物取引業者が、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し受けることができる報酬の額は、第二から第八までの規定に準じて算出した額に百十分の百を乗じて得た額、当該代理又は媒介における仕入れに係る消費税等相当額及び①ただし書に規定する額を合計した金額以内とする。

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